新発見!「デュシャンはサイクリストだった」その6 Roue de bicyclette
当時と現在で多少の違いはあるものの、自転車(スポーツバイク)は
車輪(ホイール)を簡単に着脱できる仕組みになっている。
ところがデュシャンのRoue de bicycletteは、“roue(車輪)”単体ではなく
前輪と車体のハンドルポスト(コラム)を結びつけるフォークが付いている。
通常、車輪を付けたまま、フォークを車体から外したりはしない。
ただ、前輪だけを単独で自由に回せるようにするには、
フォークを付けた状態で本体から切り離し、デュシャンがしたように
スツールなどの台座に据え付けるのが、合理的なやり方だろう。
しかし、しかしである。自転車の構造を熟知していなければ、
「フォーク付きの前輪をスツールに」という発想は出てこない。
それも、それもである。まだ自転車がそうポピュラーでなかった1910年代に
デュシャンはそこまでやってのけたのである。
だからデュシャンは、時代の先端を走るサイクリストだった。
そしてRoue de bicycletteは、レディメイド(既製品)ではなく
彼なりに手を加えたカスタムメイドに他ならない…ということになる。
ちなみに、Roue de bicycletteの復元品は、上の写真のとおり、
ストレートフォーク(真っ直ぐなタイプ)と
ベントフォーク(前方にカーブしているタイプ)の2種類があり、
(いい加減な)デュシャンはどちらも公認していることを付記しておこう。